これは折に触れて書いた文章を集めたもので、一貫した内容などはない。章の名に京阪電車の駅名を使っているが、全く関係のない文章も多く、目印のようなものにすぎない。 また、事実や現状に重きを置いているわけではないので、フィクションというほどのこともないが、書いてあることを信じるのは避けてほしい。
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ショウガの天ぷらを食べると学校を半日で帰る土曜日の昼食を思いだす。
商店街の天ぷら屋には他にもいろいろあったのだろうが、あとはウインナーとウズラの卵を串にさして揚げたものがなつかしい。
いまならウスターソースで食べるのだが、その頃はショウユかあるいはトンカツソースだったかもしれない。
冷めた天ぷらのほのかに甘い衣をかみしめると、ゆっくり油がしみだしてあとからショウガのつんとした辛さが追いかけてくる。そのとき、わたしの受容体は、理性の働きではとてもまかないきれないほどの情報をあちらこちらに伝達し、次の瞬間には記憶の蜃気楼を作り出すのだ。
あまりにも多くの月日が流れてしまったように感じられるいまでも、ウスターソースの海に浮かぶショウガの香りは、わたしを静かで穏やかな土曜の午後へと引きもどす。